主訴:不妊 鍼灸治療 ひのき堂川上はり灸院症例
患者Kさん(38歳 女性)
初診2021年11月
症状 3年ほど前から不妊治療を行っている
(体外受精、排卵誘発、ホルモン剤、甲状腺ホルモン促進チラージン服用)
ホルモン剤の副作用で足のむくみ、冷え、便秘
脈 緩脈(ゆるみ)・沈脈(沈み込み、元気のない)

初診時治療
脈の打つ位置が極端に沈み込んでいて元気のない脈をしていた。むくみや冷え、便秘など流れが悪い症状もあり、流れを良くする事を主眼に治療を行った。
流れが出てくると甲状腺機能も発揮しやすくなる。1ヶ月後に体外受精があるので良い状態にして望みたいところなので、下腹のお灸をじっくり行った。
2021年11月23日(2度目の治療)
治療後は疲れが出たのか、早めに入眠して、朝までよく眠れた。むくみ、冷えはあるが、いくらか良いと感じる。
12月初めに生理周期なので、しっかり排出が出来るよう、代謝を促進するツボを多く取り入れて治療。
2021年12月23日
生理が12月7日に来てまだ続いている。初めは貧血、頭がぼーっとするなどの症状があったが、ここ1週間は出血はあるが、スッキリしている。
脈の沈み込みは 悪くないので、デトックスに時間をかけながら行っていると判断し、無理に出血を止めようとせず、同様に代謝を促進する方向で施術。
2021年12月30日
前回から1週間で経過を診る。
生理は止まった、足のむくみ、冷えはとても良い。見た目でもスッキリした印象。
2022年1月9日
採卵があったが、ホルモンバランスが良くないくて延期する事に。春を目処にホルモンバランスを改善していくような治療を加え方針を立てた。
2022年4月22日
3ヶ月ほど2週に1度で治療を続け、花粉症や腰痛などの治療も行い、甲状腺ホルモンの数値が良くなってきた。
2022年10月22日
つわり症状が出始める。胃のむかつき、食欲の波、吐き気、ご飯の炊く臭いが嫌だ。
臭いに敏感に。
つわりの治療をおこなう。足の裏につわりに効くツボがあるので、お灸を行う。つわりのピークは12週前後でピークアウトする、それまではお灸を続けやり過ごす。
2022年10月8日
念願の妊娠。
現在妊娠5週。安定期12週までは慎重に様子を見る。下腹、骨盤、下半身を温め、体をリラックスする治療を行う。
2022年10月29日
つわり症状が改善。普通に食事ができる。
安定期に入り、一安心。
治療も2週おきに戻し、切迫早産予防、妊娠高血圧症、妊娠糖尿病などの治療を加味して継続。
考察
不妊 鍼灸治療
不妊治療に対する鍼灸治療のアプローチは、体の流れと緩みがポイントだと考えております。
血液、リンパ液、気の流れを改善し循環を促す事、体の芯から緩む事、この2つが上手くいけば妊娠しやすい体が作られます。
日本は外国に比べると不妊大国だと言われてしまいます。衛生環境が整い、生活水準も高いのになぜでしょう。女性の社会的な環境と、もう1つに不妊治療のとらえ方があると思います。
諸外国では精神的な部分のケアを医師や周りの親族が行います。統合的なアプローチが必要な分野であると考えています。他の疾患にも言えることですが、統計や数値では計れないのが身体だと思います。
体の問題、心の問題、自分を取り巻く環境、育った環境や幼い頃の記憶など様々な要因を統計的に考える時期ではないかと個人的には考えています。
Kさんのように40歳前後で妊娠するというケースは最近では少なくないです。一昔前のように年齢だからと諦めてしまうのは余りにもったいないと思います。
鍼灸治療は統合的に診察をして治療を行うところが強みだと思います。患者さんの置かれている状況や考え方によっても治療を変えます。不妊で数値に右往左往している方、現在の治療に限界と疲労を感じ、終わりのないトンネルの中にいるような方に是非鍼灸治療をお勧めしたいです。